Japanese
English
主題 視覚
網膜の微細構造
The Fine Structure of Vertebrate Retina
山田 英智
1
Eichi Yamada
1
1九州大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Faculty of Medicine, Kyushu University
pp.54-66
発行日 1967年4月15日
Published Date 1967/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902718
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網膜はいうまでもなく感覚器としての光の受容装置として,本質的役割を果す部位である。発生学的には脳の側壁の膨出としてできる,いわゆる眼杯に由来するから元来は中枢神経の一部と考えうるものであり,事実その構造は完成されたものでもなお,中枢神経組織と同様の構築を示すのである。その意味で,他の感覚器とは基本的に異なつていることをまず注意しておく必要がある。つぎに,中枢神経組織と同様ではあるが,この組織を構成する神経要素,神経膠組織,血管などはそれぞれ特有な分化をしていることはいうまでもない。しかし,これらの構成要素は他の中枢神経の部位にくらべると,その配列が規則正しく,相互の連絡も比較的簡単であり,またその種類も比較的少ない。したがつて,他の中枢神経の部位にくらべれば,その構造も,生理的活動などもこれを分折する際にやや便利であるといえよう。網膜で得られた知見は他の中枢神経にもあてはめることも可能であり,研究の対象として興味があると共にまた便利であるといい得る。おそらく,このような理由もあつて,網膜は現在まで電子顕微鏡によつて最もよく検索された組織の一つといつてもよいであろう。
網膜の構造に関する知識は,その大部分は1850年代以降のすぐれた組織学者の研究によつてうちたてられたものである。
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