Japanese
English
特集 生体膜その2
蛙皮の微細構造—生体膜の構造と機能
Electron microscope observations on the fine structure of frog skin
品川 嘉也
1
,
入交 昭彦
1
,
岡本 純子
1
Yoshiya Shinagawa
1
,
Akihiko Irimajiri
1
,
Junko Okamoto
1
1京都大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Faculty of Medicine, Kyoto University
pp.206-214
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902586
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少女を右腕にとらえ,左手に微笑をつかまえて,その二つを別々に研究することはできないとA. Szent-Györgyi1)はいつている。物質とその反応,あるいは構造と機能とを研究することは生命それ自体を研究することであるともいわれる。"構造は機能の一部である"2)というのもこの思想の別の表現と考えられ,生命の本質的理解を志す研究者の念頭を離れることのない問題と思われる。しかし現実には生理学と形態学との諸概念に統一的理解の得られることはむしろ少なく,本稿でとりあげる蛙皮の構造についてもその機能を説明するに足る形態学的知識は決して十分ではない。
これは蛙皮電位あるいは蛙皮電流の研究がイオン輸送の機構という本質的に微視的な問題にすすんで行つたのに対し,うらずけとなる形態学的観察が光学顕微鏡を主力としていたことにもよると思われる。一方,蛙皮の電子顕微鏡による観察3-7)は,従来,分化と成長の観点からあるいは比較解剖学的観点からなされることが多く,イオン輸送との関係づけは問題の困難さも手伝つて十分意識的におこなわれてこなかつたようである。最近,これまでの形態学的知見の蓄積と電子顕微鏡技術の進歩により,イオン輸送機構の解明を目標とする蛙皮微細構造の追求がすすめられるようになり2,8,9),Ottosonら15)のpioneer workに新しい光と批判が投げかけられようとしている。本稿もこの方向に沿つての一つの試みである。
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