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特集 てんかん
てんかんの病因論—小児期を中心として
Etiology of epilepsies in childhood
有馬 正高
1
M. Arima
1
1東邦大学医学部小児科
1Dept. of Pediatrics, School of Med., Toho Univ.
pp.625-632
発行日 1968年10月25日
Published Date 1968/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904533
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I.緒言
小児は痙攣の好発時期であり,一般人口の約10%が就学までに少なくとも一度は痙攣を経験することがしられている。てんかんは痙攣性疾患そのものではないけれども,小児を扱う多くの医師が,てんかんと診断せざるを得ない症例にしばしば遭遇することは事実である。てんかんの病因を論ずる際に,てんかんとは何かという立場を明確にする必要がある。てんかんの定義を,発作性の脳の電気的律動異常にもとづいて身体的精神的異常を反復する症候群とするならば,てんかんの原因となる基礎疾患とは脳の電気的律動異常を反復性発作におこしうる疾患ということになろう。このような疾患は,脳そのものに原因がある場合はもちろんであるが,脳に一次的な原因がなくても,体液性に脳に機能障害を与えることにより発作性の電気的律動異常をもたらす例が数多くしられている。
従来,既知の体液性の因子による反復性の発作はてんかんから除外しようとする考えをもつ人も多い。しかし,脳に明らかな器質的なてんかん原性の異常を証明しえない原因不明のてんかんまたは真性てんかんといわれている数多くの症例が,果たして脳に一次的な機能障害をもつているかというと誰も答えることはできないのである。むしろ,脳以外の部に一次的な異常が存在し,脳はその異常を反映する場にすぎない事例が過去に見出きれてきたし,今後も見出される可能性が推察される。
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