シンポジウム 頸肩腕症候群
頸部脊椎症—病因論
泉田 重雄
1
1国立小児病院整形外科
pp.116-122
発行日 1966年5月25日
Published Date 1966/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903734
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Strümpell(1888),Marie(1898)等に始まる脊椎の変形性変化に起因する脊髄の障害はその後やや暫らく,世に埋れて経過したが,Adson(1925)Stookey(1928)等によつて,頸部椎間板ヘルニアが発見・解明され,いわゆる頸腕障害が時代の脚光を浴びるにおよんで,頸腕障害の本態として頸部脊椎症が,頸部椎間板ヘルニアをしのぐ重要性を有することが認識され,同時に従来,筋萎縮性側索硬化症・進行性脊髄性筋萎縮症等のいわゆる系統脊髄疾患とされていたものや,多発性神経炎,脚気,高血圧等として処置されていた患者の少なからぬものが本疾患であることが明らかにされた次第であつて,頸部脊椎症の解明は脊髄外科における近年の最大の進歩と称しても過言ではない.
しかし今日なおこの疾患の原囚本態に一歩立入つてみれば,疑問の点は少なくなく,さらに詳細な病態・発症機序に至れば一層その感が深い.これら原因,本態・発病機序の解明は治療の根本策の確立に不可欠のことである.われわれは永年この究明に携わつて来たが今回,ここに過去の歩みをふり返つて要約し,本疾患の本態解明の一道標としたい.なお個々の神経症状の分析はあまりに錯雑しているのでしばらく措き,本質的な病因論に限つて論述する.
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