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小児の亜急性壊死性脳脊髄症(Leigh病1))
(表2)
附:Wernicke脳症とWilson病
自験のLeigh病の初発年齢は,生後4ヵ月から4歳,症例3には,同胞1人の発症例がある.経過は,いずれも亜急性また進行性,4ヵ月から1年8ヵ月後に死亡している.斜視,共同偏視,瞳孔の対光反射障害,嚥下,構音,呼吸の諸障害また聾など,脳幹損傷の諸症状が明らかである.一方,下肢や四肢の痙性麻痺,ヒヨレア・アテトーゼ,無表情,失調,企図振センなど,錐体路,錐体外路また小脳諸系の障害も,これに加わっている.さらに各種発作,たとえば,点頭痙攣,強直性,間代性痙攣,オピスト・トーヌス,失神,意識障害,さらに呼吸困難,チアノーゼなどが,症例により,また同一例でも,時期をたがえて,発作的,episodicに出没する.知能障害については,症例1をのぞき,明確な記載はない.その理由は,前述の重篤な意識障害や各種発作が重畳し,しかも乳幼児であったため,その正確な観察と記述はおよそ困難か,不能であったためであろう.が,実態的には,精神機能の高次障害があったことは,まず疑いない.したがって,Leigh病の臨床・疫学は,間脳から脳幹にかけての諸障害がその中核をなす点で,前述のIS群と幅ひろい共通性がある.ただし,Leigh病では,点頭痙攣の記載は,症例1のみであり,亜急性,進行性の経過に対応して,より重篤,またバラエティに富むものといえる.
Leigh病の神経病理学のうち,前述のIS群また乳児の一急性例のそれと共通する所見は,以下に要約される.1.症例により,病巣の広狭性と局在性に多少の差があるが,壊死病巣は,症例2をのぞき,延髄から中脳にかけて,とくにその被蓋部に,左右ほぼ対称性に分布する(図9F,10A).一方,間脳領域には,被殻(Pt),尾状核(CN)に病巣が必発し,ときに淡蒼球(GP),黒質,また視床もおかされる(図8A~C,9A,E),したがって,この局在選択性が,Leigh病と前述の2疾患に共通する最大の特性といえる.2.比較的新鮮巣では,髄鞘の消失にくらべて,神経細胞や軸索はよく残っており,脱髄的様相を示すが(図8D,9E),血液・脳関門が障害され,血漿,フィブリン,血球などの実質内侵入によって(図8G),組織は,嚢胞性に壊死,軟化におちいる箇所がある(図8B).
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