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特集 第8回神経病理学会
脱髄
典型的多発性硬化症の剖検例
An autopsy case of classical Multiple Sclerosis
米沢 猛
1
,
岡本 一也
2
,
川勝 良昭
2
Takeshi Yonezawa
1
,
Kazuya Okamoto
2
,
Yoshiaki Kawakatsu
2
1京都府立医科大学病理学教室
2京都健康保険鞍馬口病院内科
1Department of Pathology, Kyoto Prefectural University of Medicine
2Department of Inner-Medicine, Kuramaguchi Hospital
pp.757-763
発行日 1967年12月25日
Published Date 1967/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904466
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I.緒言
多発性硬化症(以下M.S.と略す)は最も典型的な脱髄性疾患で病理学的に髄鞘を特異的に侵し,神経細胞および軸索にほとんど変化を示さない。また神経膠細胞の増加とそれに伴う膠線維の増加により,神経組織の変形などはほとんど認められないのが特徴である。しかし周知のごとく本症の発生は地理的に特異な分布を示し,北欧をはじめ比較的寒冷地(緯度45°付近)ではその頻度は高く,これに反し温暖な地方でははなはだ低い発生率を示している。とくにわが国においては,きわめてまれな疾患であり,その死亡率は年間10万人に0.1人という低い値を示している。本邦でのM.S.はこのように頻度が低いだけでなく,病理解剖学的所見は頻度の高い欧米のそれとは必ずしも一致したものではなかつた。すなわち,多くの報告者1)10)15)17)が指摘しているごとくわが国に見られた剖検例は脊髄と視神経とにつよい炎性像と組織の破壊および変形が見られている。したがつて本邦での報告例を多発性硬化症というより,むしろ視神経脊髄炎の一つの型と考える人たちもいるほどである.ここに報告する症例はこのような分類上疑義のない典型的多発性硬化症であり,本邦で見られた最初の典型的多発性硬化症といいうるであろう.
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