特集 第8回神経病理学会
会長演説
神経病理と全身解剖—転移性脳腫瘍の病理から
川合 貞郎
pp.683-686
発行日 1967年12月25日
Published Date 1967/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904459
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病理学のなかで,神経病理学は非常に特異な発展経過をたどつて今日にいたつているが,これは,一般病理学の場合と異なつて精神神経科の学者によつて開発された面が非常に多いからである。もちろん病理学者のなかにも,中枢神経の病理学に貢献した学者も少なくないが,一般的には病理学を専攻する者の神経病理学への関心が必ずしも強いとはいえないのである。
一般病理学では,日常の業務として行なわれている病理解剖に際しては,原則として全身解剖を行なうことになつており,当然開頭も行なわれているのであるが,脳の検索は染色技術など標本作製技術の特殊性のためもあり,ヘマトキシリン・エオヂン染色,脂肪染色程度の単純な染色でひととおり鏡検するに止まることが多く,病状の組織学的解析が十分であつたとはいいがたい面があるように思われるのである。この点,病理学を専攻している私自身も大いに反省しているしだいである。
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