外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・6
転移性脳腫瘍
松本 健五
1
Kengo MATSUMOTO
1
1岡山大学医学部脳神経外科
pp.93-95
発行日 2001年1月20日
Published Date 2001/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904354
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疾患の概念
頭蓋外に原発巣を有する悪性腫瘍(癌)の頭蓋内転移をいう.脳にはリンパ組織が存在しないため,多くは血行性に転移する.一般に皮髄境界部の細動脈で癌細胞が塞栓子となり,増殖し,血管壁を破り,腫瘍を形成,増大する.好発部位は最も血管分布の広い中大脳動脈流域(前頭,頭頂部)の脳実質内,特に皮質下である.固形癌からの転移は境界鮮明な腫瘍塊を形成し,嚢胞形成あるいは中心性壊死をしばしば認める.発生頻度は好発癌年齢に一致し,ピークは60歳前後である1,3,4).最近は癌治療の進歩に伴う癌患者の長期生存,癌年齢人口の増加,さらにCTやMRIなどの診断技術の進歩による発見率向上などが加わり,日常診療でよく遭遇する疾患となっている.脳腫瘍全国集計調査報告(脳神経外科治療対象)によれば,原発性脳腫瘍に対し転移性脳腫瘍は脳腫瘍全体の17.6%であり,多発腫瘍が約半数を占める.原発巣として52.7%を肺癌が占め,以下,乳癌,大腸・直腸癌,胃癌と続いている(表).生存期間延長とともに脳転移率は上昇し,多発転移率も高くなる.肺の小細胞癌と診断されて2年以上生存している患者の80%以上で脳転移がみられる.一方,癌の種類のほうから脳転移をきたしやすいものをあげると,黒色腫(90%),悪性絨毛上皮腫(60%),肺癌(20%),乳癌(16%)となる.
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