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特集 日本脳炎
日本脳炎研究の疫学における発展
Progress in the Studies of Epidemiology of Japanese Encephalitis
三浦 悌二
1
Teiji Miura
1
1東京大学医学部衛生学教室
1Department of Hygiene and Preventive Medicine, University of Tokyo
pp.259-272
発行日 1967年8月25日
Published Date 1967/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904407
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I.緒言
日本脳炎の研究は,その始まりから疫学的な宿命を担つていた。そして今日でもその疫学的な解明が強く求められながらも,なお重要な問題の多くが未解決のままに残されている。日本脳炎の研究が,わが国でとくに重要であることは早くから認められていたので,戦前には稲田竜吉教授を長とする委員会,戦後には小林六造予研所長を長とする協議会が設けられて研究が行なわれ,かなりの成果をあげていた。中でも三田村らによる蚊説の確立は最も著明な業績であつたといえる。それでもなお,日本脳炎の疫学,日本脳炎ウイルスの生態についての知識ははなはだ不十分のままに残された。
多数研究者の長年の努力にもかかわらず,それが解決しない理由は何によるものであろうか。いままでの研究態勢のあり方になにか欠陥がありはしなかつたか。もしあつたとすれば,それは工夫と努力とで解決できる問題であつたろうか。われわれは今後こういう点にも常に強い反省を必要とするものであろう。いずれにしても,日本脳炎の疫学の研究は,現在でもなお苦悩の最中にある。しかし,その混とんの中においても新しい発展への芽ばえがここかしこにうかがわれはしないだろうか。いまここに記述しようとするのは,整然とした疫学の体系ではなく,いい古された学説の解説でもなくいまなお苦悩に満ちた今日の状態の一端を記すものであり,それは日本脳炎の疫学的研究の今後の発展にいささかなりとも役に立ちうることを願うためにほかならない。
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