Japanese
English
特集 記憶
ネウロンと記憶
On Possible Relations between Neuronal Activities and Memory
久保田 競
1
Kisou Kubota
1
1東京大学医学部脳研究所生理部門
1Department of Neurophysiology, Institute of Brain Research, School of Medicine, Tokyo University
pp.601-605
発行日 1966年12月25日
Published Date 1966/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904354
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I.はじめに
刺激に対する神経系の応答効果が,時間を経ても神経系の内部に残るという現象(広い意味での記憶現象)は,神経系の,ことに中枢神経系のもつ顕著な働きのひとつである。そのため,この記憶の生理学的メカニズムを説明しようとする試みがいろいろとなされてきた。現状ではこのメカニズムの十分な解明がなされていないので,今後いろいろな仮説が生まれては消滅していくことと思われる。
神経系の働きは基本的にはネウロンの回路網で構成されている。つまりこのネウロンの働きによつて神経系の統合作用が営まれているのであるから,記憶の働きもネウロンの働きを中心として理解していかなけれぼならない。だからネウロンの神経活動(ネウロンの本質的興奮活動は電気的活動によつて営まれるから,電気活動といいかえてよい)を考慮にいれない記憶学説は,単なる説明であつて作業仮説とはならない。たとえばHydénらの主張する化学説は,記憶の生化学的側面を強調する現代的意義は認められるが,ネウロン活動の機能面への配慮がないために受け入れがたいものである。
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