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特集 第7回神経化学懇話会
シンポジウムⅡ/神経系病態の生化学
黒内障性白痴脳の脂質の分析と組織化学
Chemical Analysis of Brain Lipids and Histochemistry of Amaurotic Family Idiocy
猪瀬 正
1
,
酒井 正雄
1
,
井上 勝義
1
,
田野 稔郎
1
Tadashi Inose
1
,
Masao Sakai
1
,
Katsuyoshi Inoue
1
,
Toshio Tano
1
1横浜市立大学医学部神経科
1Neuropychiatric Dept. of Yokohama City University
pp.501-507
発行日 1965年9月25日
Published Date 1965/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904206
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まえおき
黒内障性白痴または黒内障性家族性白痴amaurotic family idiocy(a. f. i. と略記する〉が遺伝性の糖脂質代謝障害であつて,それが主として神経系統に現われることはすでに定説であり,周知のことである。また,神経系の組織病理学的研究は古くから行なわれて来たのみならず,その著しい形態学的変化は神経病理学者の興味を惹いて,その精細な研究業績の集積は,もはや新たに加える余地がないほどである3)5)。そして,その最大の著明な所見は,neuronにおける特異な物質の沈着であつて,その結果,神経細胞の胞体あるいは突起が膨れて,いわゆるSchaffer-Spielmeyerの細胞過程が現われる。かつて,Spielmeyerは、その独特な細胞病変をもつて,本病に病態特異的なものであるとしたことは有名である。
組織病理学的研究とともに,次第に形を整えつつある組織化学は,本病について,ことに,neuron内沈着物質について,その染色性を検討して,化学的性質を推定せしめ得るようになつてきた。また電子顕微鏡による,大脳皮質の超微構造研究は,これまた驚くべき知見をもたらして,胞体内沈着物質が特異な膜状構造を示す顆粒であることが明らかとなり9),その微量化学的分析の結果,そこにはhexosamineが多量にふくまれていることがわかつた12)。
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