Japanese
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特集 小脳
黒内障性白痴の小脳の病理
Die Neuropathologie des Kleinhirns bei der amaurotischen Idiotie
猪瀨 正
1
,
萱場 德子
2
1横浜市大神経科
2東北大精神科
pp.639-646
発行日 1959年4月20日
Published Date 1959/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901699
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まえおき
黒内障性白痴の組織病理学は,いろいろな意味で重要性をもつている。その第1は,独特な神経細胞の変化を示すことである。そしてその神経細胞の典型的な病態は,それだけで本疾患を診断することができる。独逸語のpathognomonischという言葉が,まさしく適当する。しかも,そのような場合は,神経病理学では,ほかに類例がないといえる。第2には,かかる神経細胞の変化が,脂質の代謝異常にもとづくということが明らかであるという事実である。神経細胞とその突起の異常な形態学的変化は,その部分に脂質が沈着する結果生ずるとみなすことができて,時には,全身の脂質代謝障害の部分的現象であることもある。このようにその病理成因が,その究極の本態はさておいて,判然としている疾患は,それほど数多くない。
かくて,本疾患の病理学的研究は今世紀の初頭から,盛んに行われて来たし,また臨床型に関しても多くの知識が集積されて来た。ところで,本疾患の病的過程は,Schafferによればubiquitärであるとされ,その見解は大体に於いて承認されているとみてよいであろう。たしかに,中枢神経系全般に,その病変は存在し,また末梢の植物神経系の神経節細胞さえもその病変から免れてはいない。しかし,多くの場合病変の程度は部位によつてかなりことなつている。ことに発病期の遅いものでは,それが著しいようである。
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