Japanese
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特集 脳血管性障害・II
血液疾患,出血性素因を背景とする脳血管性障害
Cerebral Vascular Lesion based upon Hematologic Disorders and Hemorrhagic Diathesis
祖父江 逸郎
1
Itsuro Sobue
1
1名古屋大学医学部内科第一講座
1Ist Dept. of Internal Med. Nagoya Univ. School of Medicine
pp.648-655
発行日 1961年9月25日
Published Date 1961/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903942
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脳は機能的或いは器質的な血行障害によつて実質の障害を来たす。機能的な障害としては各種の要因に基く全身循環状態の影響や,局所的な脳血管の変化なども含まれ,これらの結果として脳実質の損傷を生ずる。そういう意味からすれば,各種の貧血状態や真性多血症などの血液疾患も脳障害に関与することは当然考えられる。低酸素血症や循環血液量の減少,血流抵抗,血流速度低下などは,所謂脳血行の機能的障害の要因として考慮されるわけで,血液疾患との関連は深いであろう。器質的血行障害として血管変性,血管炎,血管異常或いは血栓,塞栓などにより脳出血や脳軟化が生ずることは一般的に考えられる所であり,更に出血性素因が脳,脳膜出血と深い関連にあることも充分認められている。器質的な血管障害による脳出血や脳軟化についても,やはり原因疾患の一つとして血液疾患や出血性素因が或る役割を果している。所謂脳卒中についてはその基盤になる疾患は種々であるが,剖検卒中脳の原因的分類に関する調査の一つとして第1表に示す様な結果が報告されている。これによれば,血液疾患,出血性素因によるものは全体の7%となつている33)。これは勿論卒中脳に就いてのものであり,脳,脳膜の病変をも含めて更に広く血行障害による一般的概念からみれば,血液疾患,出血性素因の占める割合はより高率になるかも知れない。
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