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Ⅰ.まえがき
有機水銀とくにメチル水銀の魚介類を介しての中毒として惹起される水俣病が,単なるHunter-Russell症候群1,2)のみでとらえられない多くの問題を含んでいることは,そのdose response relationshipを基盤として考える時容易に理解されうることであり,また病理学的立場3,4)から,その中毒による障害の広がりと強さを認識する時,水俣病症状の複雑さも,一定のルールのもとに整理されて行くべきものを持っていると考える。
病理学的には,水俣病は,きわめて強烈な病変とその拡がりから,きわめて軽い病変にまで及んでいるが,私どもは後述するように,それらを臨床病理学的立場から七つの段階に分けて観察している。その中でいわゆる失外套症候群(Das apallische Syndrom,Kretschmer)5)を示す一群が存在することは特記されねばならない。この症候群を示すものはもはやHunter-Russell症候群には入らない。また,私どもは進行麻痺様症状を示す痴呆を主症状とする症例群を知っており,それについては一部既報4)した。
Apallic syndrome was observed in 4 cases from 61 autopsy cases of Minamata disease (methylmercury poisoning). All of these 4 cases were poisoned at the childhood stages of 2y 1m, 3y 2m, 5y5m and 5y7m. During the course of severe clinical signs and symptoms through Hunter-Russell syndrome the apallic syndrome appeared gradually and the patients survived from one year and half to 18 years.
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