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Ⅰ.まえがき
水俣病の長期経過剖検例については,すでに数回にわたって報告し,また,その特徴についても記載した23,25,27〜29,31)。しかし,急性発症により重症水俣病となり,その後いわゆる失外套症候群となって18年の長期にわたって生存し,ついに死亡した剖検例のような特異な症例は初めてである。
小児水俣病の重症例についての剖検4例のうち1例は急性発症26日で死亡しており,他3例は急性発症重症者であったが,それぞれ1年6か月,2年9か月および4年の経過中に失外套症候群を呈して死亡したもので,それらの病変は定型的水俣病変の特定のパターンを示し,中でも1例はきわめて高度の病変により,大脳皮質の広範囲にわたり著明な肉眼的海綿状態を呈する特殊例であった8,22,23)。他2例はそれぞれ類似の病変で水俣病病変の定型的局在性をあわせもつもので,しかもその局在性に一致して著明な顕微鏡的海綿状態があった例である。今回の報告例は小児水俣病剖検の第5例目に当たり,発病初期に前4者ほど重症でなかったが,やはりそれに次ぐ重症例であり,失外套症候群を呈して,18年間を経過し,消耗性に死亡した例である。Hunter & Russell4)が報告したメチル水銀中毒例は小児例ではないが,23歳で発病し,15年経過後に38歳で死亡した本中毒症の最初の剖検例に該当するが,長期経過という点できわめて類似しており,その類似性が興味を惹く。
A prolonged case of female childhood Minamata disease occurred acutely at the age of five. The patient survived till the age of 23 with apallic syndrome.
Characteristic histopathological findings in Minamata disease were still demonstrated. In cerebrum, there were slight macroscopic spongy state in a part of the calcarine cortex, microscopic spongy state in some parts of the calcarine and postcentral cortices and also in the visual areas in anterior lobuli, the loosening in 2nd layer and thinning-out decrease of nerve cells were noticed in the whole other cortices.
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