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I.はじめに
失外套症候群(以下ASと略す),または無動性無言(以下AMと略す)は比較的明確な臨床像である。しかし他の同様な脳障害の全体的精神機能低下である意識障害や痴呆(知能障害)との関連はなお不明確で,その臨床的位置づけもいまだ一般的に確立されているとはいえない。またKretschmer15)が当初考えたほどにその区別は明らかでないように思われる。
ASまたはAMの臨床像の中核は高松35)が挙げているように無言,無動および刺激に対する無反応であろう。Klee14)はAMの基本障害を意識や精神状態に関係なく,akinesiaに置いた。著者はKleeとは多少異なった意味ではあるが,前記3徴候の中でもとくに無言,無動の行動面の障害を最も重要であると考える。それは反応性の量でなく質が変化して,その反応の合目的性を失った状態であっても,いまだ「動き」が残っているときには,これをASまたはAMと呼ぶことはないからである。しかしこの「動き」の消失こそが,単なる意識障害や知能障害から際立って相異している点だと考えることができる。したがって失外套症候群や無動性無言の両者に共通した必要条件として,原著者らの意図を汲んで,最低次の三つを挙げることができると考える。
A case of apallic syndrome was reported in a 50-year-old motorman with interval type of acute carbon monoxide poisoning. In this case we discussed on the declining "process" of motor function to akinesia, one of the main symptoms of apallic syndrome.
The patient had lost consciousness for over 22 hours due to exposure with a burning briquet brazier. Following lucid interval for 19 days, he became mute and expressionless. Several days after he could not start to step forwards without leading him by the hand, but stood up without instability.
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