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特集 メチル水銀中毒症研究の最近の進歩
人の慢性発症水俣病(慢性メチル水銀中毒症)の病理発生,とくにその原因発生について
Pathogenesis of chronic Minamata disease (chronic methylmercury poisoning)
武内 忠男
1
,
衛藤 光明
1
Tadao TAKEUCHI
1
,
Komyo ETO
1
1熊本大学医学部病理学教室第2講座
12nd Dept. of Pathology, Kumamoto University School of Medicine
pp.845-860
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903666
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I.まえがき
水俣病が水銀汚染魚介類の摂取によって惹起されたメチル水銀中毒症であることは,すでによく知られた事実である。本症の発生病理については,その病理とともにわれわれのつとに報告1〜6)してきたところであるが,水俣病の慢性発症については,なお未知の部分が多い。すでに武内7)が指摘しているように,現在の水俣病には,1)急性発症の後遺症,2)慢性発症の後遺症が存在し,慢性発症には,本来の慢性発症と椿8)のいう遅発性発症や武内9)のいう加齢性発症などが含まれる。また慢性発症の病理発生には,著しく知見に欠けたところが多いので,今日もっとも問題となる水俣病の原因病理発生は再検討を迫られているといえよう。
文献的に既報されている水俣病以外のメチル水銀ないしエチル水銀化合物の人体中毒例のReview約45例以上の症例10〜14)をみても,急性発症は20例に充たず,過半数以上が慢性発症である。この慢性発症には,アルキル水銀暴露期間が,2〜3年から数年,ときには十数年に及んでおり,最大のものは間歇暴露とはいえ14年ないし15年に及んでいる。すでにPentschew14)はメチル水銀中毒症には,発症までに一定の潜伏期の存在することを指摘しているが,武内7)はこの潜伏期の長期間に及ぶものを慢性発症とみ,とくにその発症が緩徐であるものを指摘したのである。
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