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特集 メチル水銀中毒症研究の最近の進歩
小児および先天性メチル水銀中毒症
Infantile and congenital Minamata disease (poisoning by methyl mercury in children and fetus)
森山 弘之
1
,
原田 義孝
1
Hiroyuki MORIYAMA
1
,
Yoshitaka HARADA
1
1熊本大学体質医学研究所小児体質学部
1Department of Constitutional Pediatrics, Institute of Constitutional Medicine, Kumamoto University
pp.901-911
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903670
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はじめに
昭和31年4月21日,脳症状を主訴とした6歳の女児が,当時,新日窒水俣工場付属病院小児科部長であった野田兼喜博士の診察を乞うた。これが特異疾患であることに注目した野田博士の報告にもとづいて,はじめてこの奇病に対する医学的研究が開始された。熊本大学医学部では同年7月に水俣病研究班が組織され,本疾患の原因究明にあたることになった1)。さかのぼって,この原因不明の中枢神経系疾患は,昭和28年頃から,同地域,すなわち熊本県南部の水俣市郊外の一定地区に発生していた2〜5),この特異疾患の調査が始まると同様の類似症状を示す患者が,地域集団発生的に多数発見され,成人,小児を問わずその症状は類似しており,さらに,われわれはその頃同地域に出生した乳児に重症の脳性小児麻痺が,特異的に高頻度に発生している6〜8)ことを見出し,同一原因によるものと推測した。これらの原因については,疫学調査,動物実験9〜18),有機水銀の含有量7〜9,19〜21),病理所見22)などから,有機水銀とくにメチル水銀化合物が原因物質であることが明らかにされ,本症はその中毒性疾患であることが判明した.本文では,主として昭和46年までの資料にもとづいて,小児および先天性メチル水銀中毒症について述べる.
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