特集 食品汚染
公害による食品汚染—メチル水銀,PCBなどを中心に
野村 茂
1
1熊本大学医学部公衆衛生学教室
pp.348-356
発行日 1975年6月15日
Published Date 1975/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205017
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わが国では公害という用語をもって,環境汚染に関する生活妨害や健康障害のみならず,極めて広範囲の問題がとりあげられている."公害対策基本法"では,「事業活動その他,人の活動に伴って生ずる」人為的(man made)な「相当範囲にわたる大気の汚染,水質の汚濁,騒音,振動,地盤の沈下および悪臭」といった常態の自然的,社会的環境を破壊する現象によって「人の健康または生活環境にかかわる被害」を招来するような事態であると,公害行政の対象を規定している.しかしまた,一般社会では,社会生活や健康を阻害するものと公衆が意識するような事態を公害として考えるべきだという見方もある.
いずれにしても,現実に公害は人為的にもたらされた原因から生じた事態によって人間の生活や健康の阻害を来すという一連のプロセスをもっているのであって,公衆衛生学の対象として疫学的追及を要する人災的な健康障害は,公害に関する問題として,まず,とりあげられることが多い.
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