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特集 メチル水銀中毒症研究の最近の進歩
メチル水銀中毒症の神経眼科学—病理と眼症候
Neuro-ophthalmological investigations on methyl mercury poisoning
筒井 純
1
,
岡村 良一
1
Jun TSUTSUI
1
,
Ryoichi OKAMURA
1
1熊本大学医学部眼科学教室
1Department of Ophthalmology, Kumamoto University
pp.912-919
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903671
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I.はじめに
メチル水銀中毒症(以下水俣病)は神経眼科学の領域において,後頭葉視中枢が強く侵される疾患として非常に特異性があり,高次視機能の脳における機構を解明する上にも,また,より正確な診断法を開発する上でも神経眼科学的研究を深く行なっていく必要がある。視機能のステップを眼球,脳幹部,大脳と大きく3段階に分けると,水俣病では大脳>脳幹部>眼球の順に障害の程度が強く,しかも脳幹部や眼球の病理学的障害がきわめて軽微であるという大きな特徴がある。また小脳に病変が著明であるということから,眼球運動に関与する小脳のはたらきを求めることも可能である。
このような研究上の主要問題が,病理を基礎にして出てくるのであるが,それは水俣病の研究史において病理学的研究が10年余先行し,眼科学的研究が遅れていたということにもよる。したがって私どもの水俣病の神経眼科学的研究においては,脳の病理像に基づいて,視機能異常を探る過程がとられた。このような研究過程をとり得ることは私ども眼科の研究においてはきわめてまれである。
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