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特集 メチル水銀中毒症研究の最近の進歩
メチル水銀と催奇形性
Embryotoxicity of methyl mercury compounds
西村 秀雄
1
Hideo NISHIMURA
1
1京都大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Faculty of Medicine, KYOTO University
pp.941-948
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903674
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I.まえがき
人体におけるメチル水銀の毒性の問題は中毒学上最も重要なものの一つとされているが,その主要な理由はこれが体内で蓄積されること,神経系統に対して強い毒性を示し回復し難い障害を来たし得ること,しかもその微量の摂取がほとんど何人にも避け得ないという点などにある。一般に微量ではあるが,魚類は肉類に比べて平均約10倍のメチル水銀を含み,また食品中のメチル水銀のほとんどすべては魚貝類に由来するので,魚貝を多食する日本人としてはとくに本問題を重要視すべきである。さて胎児とのかかわりであるが,そのメチル水銀に対する感受性は,出生後の個体におけるより高いとみられており,また生殖細胞に及ぼす変異原性の可能性も提起されているので,この次世代への障害の究明は最も重要な要請研究課題に属するであろう。今日まで本問題を正面から取り上げた総説としては,筆者の知る限り,村上(1969)による「有機水銀化合物の胚,胎児毒性をあらわす影響」と題する講演記録と,ほぼ同様な内容をもった国際シンポジウムにおける英文のもの(Murakami,1972),ならびにClegg(1971)がOttawaにおけるシンポジウムで述べた「水銀化合物の胎児毒性」と題する講演記録があるのみである。
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