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特集 第8回「脳のシンポジウム」
主題:ニューロパチー研究の最近の問題
神経病理学的立場からみた抗結核剤によるニューロパチー
Neuropathy due to intoxication with antituberculous drugs from neuropathological viewpoint
白木 博次
1
Hirotsugu SHIRAKI
1
1東京大学医学部脳研究施設病理部門
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.120-125
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903479
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ヒトにおけるエタンブトール中毒(以下「エ」中毒と略称)に起因する神経障害の解剖例は,きわめてまれである。その臨床は表1に概括されるが,生前における両側性の視力や色神などの障害に一致して,網膜から視神経にかけて,強烈かつ旧い病変をみいだすことができる。まず網膜では,inner ganglion cell layerの神経細胞が選択性に侵され,高度に脱落する点で,まず"SMON"のそれによく一致する(図1A)。ただし,後者では,それがpapillomacular regionに好発する傾向が著しいが,「エ」中毒では,網膜の周辺部を含めて,そのほぼ全領域に及んでいる(図1B)。一方,視神経交叉部の,とくにその中央部は両側性かつ高度に脱髄するが,軸索,髄鞘両線維とも高度に減少するのも,"SMON"のそれに酷似する(図1C,D,F)。ただし,肥胖性,また多核性の星状グリア細胞の増殖が著しいという所見は,"SMON"では見出しがたい(図1D,F,G)。他方,視神経の病変は,交叉部のそれより軽いが(図1C),軸索線維の著しい局所性腫脹が,少数ながら認められる(図1E)。また"SMON"では,病変は視神経や交叉部より,視索に著しい傾向,つまり視神経の遠位部により強烈といえるが,少なくとも本例の「エ」中毒では,視索病変は,軽微にすぎない(図1H,I)。
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