Japanese
English
特集 感覚情報の処理機構
皮膚感覚の情報処理機序
Information processing of cutaneous sensation
西岡 伸子
1
,
中浜 博
2
Shinko NISHIOKA
1
,
Hiroshi NAKAHAMA
2
1精神医学研究所
2東北大学医学部脳疾患研究施設
1The Seishin-Igaku Institute
2Institute of Brain Diseases, Tohoku University School of Medicine
pp.659-673
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903420
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I.はじめに
皮膚および皮下組織の感覚受容器と,そこから出る求心神経線維によって起される感覚の質とがどのように対応しているのであろうか。この問題は感覚生理学の中で最も古いまた現在でもなお未解決とされているものの一つである。1826年Johannes Muller5)は特殊エネルギー説を提唱し,1884年Blix4)は皮膚上に,刺激に対してとくに感受性の高い小さな点,いいかえれば感覚点(sensory spot)を見出した。これ以来,感覚受容器の種類と感覚の質との間に一対一の対応があると考え,この考えを裏づける試みがなされて来た。ところが約20年前Weddel15,49,50)はヒトの有毛部には毛包と多くの枝を持つ自由神経終末(free nerve ending)しか見出されず,マイスネル氏小体,マーケル氏触板(いずれも触受容器といわれて来た)があるのは手掌や蹠の特別の部位で,クラウゼ氏小体(冷受容器)は唇とか乳頭とか粘膜にのみ見出されると報告した。1962年彼は毛包と自由神経終末しかない有毛部でも種々の質の感覚を感じることができることから感覚の質と受容器(あるいは神経終末)との対応はすべてが固定的なものではないと考え,特殊エネルギー説にかえて,パターン説を提唱した47,48)。
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