Japanese
English
特集 感覚情報の処理機構
嗅神経系の情報処理
Information processing in the olfactory nervous system
高木 貞敬
1
Sadayuki TAKAGI
1
1群馬大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, School of Medicine, Gunma University
pp.647-658
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903419
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Ⅰ.嗅神経系の構成
1.‘におい’の受容部
ヒトの鼻腔は上中下の三つの甲介によって不完全ではあるが上中下の三鼻道に区分されている(図1)。鼻で空気を吸うとき空気は主として中,下鼻道を通って気管にはいるが,上鼻道にも少量の空気が通り,鼻腔の最高部にある嗅裂とよばれる狭い部分にも空気が流れ込む。とくに努力して"ものを嗅ぐ"ときには嗅裂にくる空気量が増加し嗅覚は鋭敏になる。
嗅裂部は褐色を帯びているから一見,色によって鼻腔内面の大部分をおおう薄桃色の呼吸上皮と区別できるといわれている。この部をおおう粘膜を嗅粘膜または嗅上皮とよび,その面積は2.40cm2(Mateson,1954),または6.40cm2(Read,1908)あるという。この部分を構成する細胞のうち,嗅細胞は感覚細胞で,先端の嗅小胞部から多数の線毛を粘液中に送り出している(図2)。‘におい’分子を吸着して細胞の興奮を起こす受容部は嗅小胞部だけでなく線毛もその働きをもつと考える人がいる。嗅細胞の周囲にある支持細胞はバウマン氏腺とともに粘液を分泌する。粘液はこれらの細胞を保護するほか,Na,K,Clなどのイオンを含み,嗅細胞の興奮性を維持している。
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