Japanese
English
特集 感覚情報の処理機構
触覚パターン認識の神経機構
Neural mechanism of tactile pattern recognition
酒田 英夫
1
Hideo SAKATA
1
1東京都神経科学総合研究所神経生理学研究室
1Department of Neurophysiology, Tokyo Metropolitan Institute for Neurosciences
pp.674-684
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903421
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
皮膚感覚はHeadによって敏感な識別感覚と痛覚や温覚,冷覚などの原始感覚の二つに分けられているが,ふつう触覚という場合には敏感な機械的受容器で起こる感覚を指し,主に識別感覚だけを問題にする。古くから触覚は,視覚や聴覚と並んでより高等な感覚とされ,原始的な味覚や嗅覚と区別されている。そして高等な感覚系では単純で直接的な「感覚」(純粋感覚)と高次の統合作用によって対象の認識を伴う「知覚」とがある程度区別できると考えられている。このような考えの根拠の一つは,人間の脳の局所的な病変によって起こる「失認」(agnosia)の症状である17)。失認とは感覚の障害を伴わずに対象の形や意味の認識だけが障害される場合をいう。皮膚感覚(より正確には体性感覚)については触覚失認(tactile agnosia)とそれに近縁な身体失認(asomatognosia)の二つが知られている。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.