特集 第6回脳のシンポジウム
主題—ウイルス感染と神経系(いわゆるslow virus infectionの考え方)
はじめに
白木 博次
1
Hirotsugu Shiraki
1
1東京大学医学部脳研究所神経病理
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.425-431
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903256
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今日1日かけて取り扱います主題は,「ウイールス感染と神経系(いわゆるslow virus infectionの考え方)」ですが,slow virus infectionと申しましても,slow,またはtemperate,つまりmildなvirus infection,あるいはlatent virus infectionなど,現在のところ,いくつかの考え方を含む,なお漠然とした概念にとどまつているように思われます。ご承知のように,この概念は,ニューギニアの地方病であるKuru病という変性疾患的なものが,チンパンジーにtransmitできたというようなところから,またScrapieやVisunaなどの研究ともからんで,ついここ10年にもならぬ間に,世界的にも大きな問題化してきております。
このような観点からしますと,本日の午後,最後に扱いますSMONの問題は,日本的な意味で,いわゆる変性疾患か,代謝異常か,中毒か,あるいはslow virus infectionか,あるいはagingの問題かなど,いくつかの因子のからみ合いの問題として考えていかねばならぬ,全く新しい疾患であり,また社会的にみても,大きな問題といわねばなりません。
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