Japanese
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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—日本における神経化学
アミン前駆物質と躁うつ病
Amine Precursors and Manie: Depressive Illness
高橋 良
1
Ryo Takahashi
1
1長崎大学医学部精神神経科教室
1Department of Neuropsychiatry, Nagasaki University School of Medicine
pp.371-377
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903248
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躁うつ病の病態生理について今日モノアミン代謝の異常が想定され,いわゆるカテコールアミン(CA)学説とセロトニン(5HT)学説とが提唱され,それぞれを裏づけようとする研究が発表されている。主としてCA学説は米国の,5HT学説は英国の研究者により主張されているが,不思議なことに一方は他方の弱点を攻撃することなく,自説を支持する証拠のみをあげている感がある。このことは両方の学説が正しいというのと同時に両方がともに不完全であることを示しているようなものである。その点から後にふれるような第三の仮説を提唱する研究者も現われてきている。たしかに今日までの研究発表からみて,イミプラミンなどのうつ病治療薬の作用機序についてはCAが5HTより関係が深いようであるが,うつ病については5HT代謝の異常所見がCAの場合より発表が多く,深い関係を示しているように見える。しかし5HT代謝の研究はもつぱらうつ病についてのもののみで,躁病については1〜2を除きほとんど行なわれていない。このことは躁うつ病というdisease entityの病態生理を考える上に大きな弱みを感じさせる。この点からわれわれは躁うつ両病相を対象に研究してきたが1〜4),その結果を中心に報告してみたいと思う。
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