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特集 脳のシンポジウム
主題—前庭神経・前庭神経核の組織と機能
眼球運動と精神状態—「前庭神経・前庭神経核の組織と機能」のシンポジウムに関連して
Eye Movements and Mental States
島薗 安雄
1
Yasuo Shimazono
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Tokyo Medical and Dental University
pp.144-147
発行日 1970年4月25日
Published Date 1970/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903116
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眼球の動きが精神状態をかなりよく反映することは,たとえば,「眼をきよときよとさせて落着きがない」,「腹が立つと眼がすわる」などの日常語にもあらわれている。
一方,眼球運動は,身体のほかの部分の運動とは違つた独特な態度をとることがある。たとえば,子供の眠りぎわにゆつくりした振子運動がおこることは古くから気づかれていた。また逆説睡眠相の存在は熟睡中に早い大きい眼球運動が出現するという事実を契機として発見されたものである。この逆説相の眼球運動が夢のなかに生ずる視覚像と密接な関係をもつことを主張する学者もある5)。眼球運動が運動機能の中で独特な位置を占めることは,いわゆる失外套症状群や無動無言症akinetic mutismの状態において一層はつきりしている。無動無言症の状態を初めて報告したCairnsら1)の記載によると,第三脳室の類上皮嚢腫をもつ少女は,全く身動きせずベッドにねていたが,いまにも口をきくかと思われるほどに検者をよく注視し,目で追い,音がすると視線をそらした,ということである。失外套症状群ではこのような生き生きとした注視の動きはないが,眼球が不規則に動くことが少なくない12)。
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