Japanese
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特集 脳のシンポジウム
主題—前庭神経・前庭神経核の組織と機能
前庭神経核の細胞構築
Cytoarchitecture of the Vestibular Nuclei
萬年 甫
1
Hajime Mannen
1
1東京医科歯科大学医学部第3解剖学数室
13rd Department of Anatomy, Faculty of Medicine, Tokyo Medical & Dental University
pp.90-95
発行日 1970年4月25日
Published Date 1970/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903106
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前庭神経核は延髄上部から橋中部にわたつてひろがる大きな灰白質で,脳幹の構造物の中では,局所解剖学的関係を理解するのに最も困難なもののひとつであると思う。私自身脳の勉強をはじめた当時,この核はまことに把えがたく,よくわからぬままに過した。ところが皮肉なことに,恩師の小川教授から最初に出されたテーマが人脳の前庭神経核の細胞構築を調べよということであつた。当時小川教授が脳神経外科学会から「眼振の解剖学」と題する講演を依頼され,その一翼を分担することになつたのである。そこで髄鞘染色やニッスル染色による連続標本を繰り返し鏡検して,自分なりに所見をまとめ,シェーマを描いた。それが図1である1)。
前庭核はNucl. medialis,Nucl. lateralis,Nucl. superiorおよびNucl. inferiorの四つに分かれている(図2)。前庭根が橋下部に入つて,前庭域に達した部分に大きな細胞いわゆるDeitersの細胞が密集している。これがNucl. lateralisである。根線維は一部背方におもむくが大部分はほぼ直角に屈して下行する。この下行線維の間に存在する細胞群がNucl. inferiorである。これより内方にあつてNucl. inferiorに比して有髄線維が乏しく横断面で三角形の領域がNucl. medialisである。
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