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特集 脳のシンポジウム
主題—前庭神経・前庭神経核の組織と機能
視器,迷路の反射発現と頸部深部受容器
Physiological Role of Cervical Proprioceptors in the Development of Visual and Labyrinthine Reflexes
檜 學
1
Manabi Hinoki
1
1徳島大学医学部耳鼻咽喉科教室
1Department of Otolaryngology, School of Medicine, Tokushima University
pp.134-139
発行日 1970年4月25日
Published Date 1970/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903114
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I.はじめに
頸部深部受容器がヒトや動物の平衡に重要な役割を果たすことはこれまでにもよく知られている。したがつてこの平衡器に障害が起ると「めまい」,平衡失調が惹起される。最近問題となつている鞭打ち損傷による「めまい」,平衡失調はこの平衡器の機能障害で起ることを私たちは漸次明らかにしつつある。正常人でも深層項筋にprocaineを注射し,その部に分布するγ線維のactivityを封鎖し,急激にその筋の緊張を低下させるようにすると,「めまい」,平衡失調が必発する。
このようにこの筋に分布する深部受容器は身体平衡維持に重要な役割を果たすことが明らかになつている。さて頸部深部受容器と眼運動系の関連については,Magnus,Baranyの研究以来多くの報告がある。しかし不思議なことに視性眼振と頸部深部受容器の関連については系統的な報告がない。私たちは鞭打ち損傷による「めまい」例の平衡機能検査を行なつているうちに,この眼振の発現と頸部軟部支持組織緊張亢進は密接な関連を有することに気づいた。すなわち被検者の項部痛または項部緊迫感が強い際には,視性眼振の出現が抑制されたり,場合によつてはこの眼振のinversionが起る。治療により項部の愁訴が消褪すると,視性眼振の出現は活発となり異常眼振が正される。この事実は視器と頸部深部受容器の間には密接な平衡機能上の連繋の存することを示唆している。
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