境界領域
整形外科と関連する平衡機能—頸部,腰部深部受容器から開発される平衡反射について
檜 学
1
Manabi HINOKI
1
1徳島大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.702-714
発行日 1968年8月25日
Published Date 1968/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903962
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はじめに
身体平衡の仕組みは古くから研究されている.例えば1651年にはBorreliの系統的研究が現われている.しかし彼は現在多くの研究者が行なつている神経—筋反射の観点から身体平衡の機序を究明してはいない.挺子の原理で関節の作川を説明したり,板上でヒトを仰臥位に置き釣り合う点を求めてヒトの重心の在り所とするといつた古典力学的方法が彼の研究方法である.この種の研究は19世紀まで続き,多くの研究報告がなされている.例えば,Fischerは人屍を凍結し,頭,躯幹,四肢にそれを解体し,それぞれについて重心を求め,それから綜合重心を帰納するやり方を報告している.これらの研究の結果現われた重要な推論の一つは,"不動の姿勢"の存在である.
しかし,このような起立姿勢が実在しないことはその後に行なわれたVicrordt,LeitcnstorferらのCephalographyによる研究で明らかにされた.この検査は第1図のようにその順点に針を備えたヘルメットを被検者に覆せ,"不動の姿勢"を命ずる.その際,頭部運動を針の上に置いたスス紙上に記録させる方法である.平衡機能が十分に発達していると考えられる正常人でも,針尖は微妙に動き複雑な軌跡をスス紙上に画く(第2図).この研究は従来の研究方向を大きく変えた画期的業績といえる.極言するなら現在行なわれている平衡機能の神経—筋反射的分析の端緒を開いたものと考える.
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