特集 展望
最近の脳神経外科における2,3の問題
喜多村 孝一
1
1東京大学脳神経外科
pp.258-268
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901734
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脳神経外科領域における最近の進歩と一口に云つても,すぐ話題にのぼる問題を見渡しただけですでに可成りの数になると思う。超音波による脳腫瘍の診断あるいは治療,放射性同位元素による脳腫瘍の診断,松果体腫瘍に対する数々の手術成功例など,いずれも脳腫瘍の診断・治療における近年の進歩を示すものである。頭蓋内動脈瘤に対しても低温麻酔のもとに積極的手術が近年は行なわれるようになつた。又頭部外傷についてみても,従来とは趣を変えた純粋物理学的・力学的な観点力らの研究がすすめられる一方,外傷による頭蓋内血液循環動態の変化,外傷の全身に及ぼす影響とくに内分泌系の変調など,臨床的な探究も試みられ種々の成果が挙げられている、又側頭葉を含む大脳辺縁系に対する脳外科酌侵襲は大脳生理学とくに辺縁系の生理学に大きな寄与をもたらしている。
このように数えあげるとこれらのいずれもが最近の脳神経外科における重要なtopicと云いうるのであるが,今回はこれらのうちでもとくに学会その他で注目をひいた2,3の問題に焦点をしぼつて論じたいと思う。
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