特集 展望
てんかん治療の現況
荒木 淑郞
1
,
梅崎 博敏
1
Shukuro Araki
1
,
Hirotoshi Umezaki
1
1九州大学医学部勝木内科
1Second Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Kyushu University
pp.269-278
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901735
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緒言
凡そ19並紀の半ば頃迄は,てんかんの治療は,殆んど荒唐無稽であり,祈祷とか,魔法薬とも云うべき薬物が与えられていた。Locockが1857年,始めて臭素剤を,てんかんの治療に応用し,大きな成果を挙けた事は,薬剤の実地応用という点から,特筆すべき進歩と云わねばならない。即ちErlenmeyerは,臭素の加里塩,ナトリウム塩,アンモニウム塩を混合した処方を奨め,その有効性を実証した事は,よく知られている。然しながら,臭素剤は,相当大量を長期間使用しなければならず,この為,胃腸障害,発疹,譫妄という副作用を起す事が屡々経験せられた。其の後,Gowersが硼素剤を抗てんかん剤として,紹介したにもかかわらず,副作用著しく,臨床的には,殆んど応用されなかつた。1912年,Hauptomann1)がPhenobarbital(Luminal)を試みて以来,Luminalは,臭素剤より,より優れた抗てんかん剤である事が証明され,今日と雖も,広く使用さかるに至つている。Barbitur酸誘導体の発見は,其の後の抗てんかん剤発見の導火ともなり,1938年,Merritt及びPutnam2)によるSodium5,5-Diphenyl Hydantoin(Dilantin Sodium, Aleviatin)の紹介は,てんかん治療上の,最も注目に値する功績と云う事が出来よう。
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