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広く最近の膵臓に関する諸問題を外科側からとりあげる場合に,先ず最初に問題となるのは本年の第66回日本外科学会総会において公募シンポジウムとして行なわれた「膵癌の早期診断」があげられる.膵臓はこの腺が腹部に深在し腫瘍は外から触れにくく,後腹膜腔にあって浸潤に対する抵抗がすくなく,門脈,肝動脈,上腸間膜動静脈の接近により早期にこれらに浸潤して剔出術の適応外となることが多いこと,リンパ流が豊富で早くから広汎な播種をまねき,又神経周囲リンパ腔への浸潤は腫瘍がまだ肉眼的に認められない位の早期から起こることがあり,あるいは細胞自体の悪性度も強く,主として膵管上皮から発生するので頭部癌といえどもこれが発育増大し,総胆管を圧迫または浸潤して黄疸を発生した場合にはすでにかなり進展しており,体尾部癌では周囲に重要な臓器がないため圧迫症状も明瞭でなく,共に発見されたときは手術不能のことが多く,消化器癌の中でももっとも切除率が低く予後不良な疾患とされている.したがって膵臓癌の治療成績を向上せしめるためにはぜひ共早期診断,早期手術が必要となってくる.
最近膵疾患の重要性が認識され,従来ほとんど注目をあびていなかった膵臓検査法も近時著しく進歩し,これらを応用して膵臓癌を早期に発見するための努力がつみ重ねられている.先ずレントゲン像では上部胃腸管の変化をほとんどの症例で認めることが出来るが,本症を疑うことの出来る位著明な所見は10%前後にみられるにすぎず,したがってむしろその陰性所見が他の疾患を否定するために役立っている.しかし本法は従前通り膵臓癌診断の基本をなすものであり,最近では二重カフ付経ロカテーテルを挿入し積極的に十二指腸を選択的に造影し,あるいは位置的関係と形態学的変化との両者を綜合判定する二段階的検索1)を行なってその異常を発見せんと努力されている.
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