総合講座 産婦人科と脳
最近の脳生理学における2,3の知見
佐々木 和夫
1
Kazuo Sasaki
1
1京都大学医学部脳神経施設生理学部門
pp.275-279
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205022
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脳生理学の研究で古くから行なわれた方法は,動物の脳のある部位を破壊して,その異常を観察することと,脳の特定部位を刺激して,その効果を調べることであつた。臨床的に,種々の脳神経疾患の症状を詳細に診察し,死後の病理組織学的所見と照合し検討する研究は,動物の破壊実験の場合と同様であり,脳の機能,特に人間の脳の働きを推察するうえに有用なことが多かつた。
脳は,多数の神経細胞がお互にシナプスで結合した複雑な神経回路の集合である。体内および体外のさまざまな刺激を感知する知覚受容器で発生した神経衝撃が,求心性末梢神経により脳に運ばれ,そこで種々の統合作用を受けて,その結果が再び遠心性末梢神経を介して効果器である筋肉,腺などに伝達されるという原則が明らかとなつた。そこで,脳を神経回路の集合として,入力信号がいかに脳で処理されて,出力信号となるかの機構を追求することが,次第に脳生理学の主流となつてきた。このような研究の推進のために大きな役割を果したのが,微小電極を用いた微小電気生理学である。
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