特集 小脳
小脳内在活動の研究
須田 勇
1
1神戸医科大学生理学教室
pp.529-535
発行日 1959年4月20日
Published Date 1959/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901690
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
中枢神経系は他の臓器と異つて,遊離した状態ではその活動様式を研究する手段がなかつた。したがつて,中枢活動は効果器に現われた変化から概念的に帰納され体系づけられてきた。電気生理学の進歩はこの事情を変えたが,中枢作用の研究の面では本質的な変革をもたらさなかつた。その理由は,作用を論ずるためには,やはり効果器におこつた変化と中枢のどこかにおこる電気的活動を対応させて説明するという方法に拠つているので,概念であつたものに電位変動という実体を置き代えたに過ぎなかつたがらである。そのために全体として活動することが本質である中枢活動の一断画のみが強調され,進歩的な混乱を来したような面があつた。もちろん,このような方法で得られた知識でも従来のものに比べれば画期的なものであり,豊かな将来への期待が看取される。
電気生理学的手法が中枢研究にもたらした方法論的重要性は別の面にある。第1は,シナップスでの興奮伝導に関する機構が把握されたことでめり,第2に,中枢の内在機構の研究の可能性が展開されたことである。この両者は同一手法,すなわち種々な程度の遊離中枢標本を用い,人為的に単純化した条件で神経機構を分析的に研究するという方法を採択したもので,ここに中枢電気生理学の本質があるといえる。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.