連載 母と子のこころの相談室—家族編・6〔最終回〕
死が残してくれるもの—関係を内在化するために
田中 千穂子
1
1花クリニック精神神経科
pp.489-492
発行日 1993年6月10日
Published Date 1993/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900709
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いよいよ家族編の最終回になりました。老人の人口が増加したことや,末期癌やエイズなどで苦しむ人々が増えた現実に引きずられる形で,私たちは「老いや死をどう受容していくか」という問題に取り組まなければならなくなりました。「老いる」ことに関する人々のイメージにはネガティブなものが多く,ましてや死という言葉は,ほとんど禁句のように扱われてきました。また,従来の心理学や心理治療論も,もっぱら児童期や青年期の人々を対象に展開されているように思われます。しかし人は死ぬことによって,その自分の生のサイクルを全うするわけで,いかに死ぬかということは,自分の人生の総まとめともいえる最後の重要な仕事といえるでしょう。
これまでキューブラ・ロスを先駆者とする死の受容に関する一連の研究は,臨死の患者さんたちへの心理臨床的援助の必要性をあきらかにし,タブー視されてきた「死の臨床」という言葉が,市民権を獲得しつつあります。
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