特集 小脳
小脳生理学の展望—前葉遠心系を中心として
高比良 英輔
1
1神戸医科大学第二生理学教室
pp.537-554
発行日 1959年4月20日
Published Date 1959/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901691
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A.形態学からの示唆
Jansen及びBrodalが1954年に出版した小脳解剖学の綜説"Aspects of Cerebellar anatomy"はすでに何度か紹介されたが(小川,1956;草間1958),その中でJansenらは,これまでの生理学的研究を概観しその対立と混乱について次のように指摘している。"もしも神経生理学者たちが,研究対象である器官の解剖学的事実について,もつと多くの注意を払うならば,混乱がより少くなることは明らかである。特にその著しい例が前葉である"(同書386頁)。Jansenらは,生理学的実験に於ける刺激点及び破壊点の正確な記載を求めるとともに,それらの部位が,彼らの提唱する解剖学的体系に従つて選択されるならば,多くの観察の不一致はずつと少くなり,また現在無視することはできないがさりとて棒系化することもできないでいる実験結果を数多くふくむ新しい明確な結論に到達することができ虹うと述べている。
従つてここでは,生理学的研究を述べる前に,Jansen-Brodalの小脳前葉遠心系についての結論の主なものを要約する。
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