特集 胎盤の科学がもたらす周産期疾患の新たな理解
1.内在性レトロウイルスと胎盤
杉本 潤
1
J. Sugimoto
1
1広島大学産婦人科
pp.1071-1078
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002723
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ヒトゲノムのおよそ1/10を占めるレトロウイルス由来の配列は,ヒト内在性レトロウイルス(HERV)とよばれる。これらの配列の一部は,進化の過程で胎盤機能に必要不可欠な “遺伝子” としてヒトゲノム中に存在することとなった。このうち3つの遺伝子がコードするタンパクが,胎盤の合胞体栄養膜細胞の融合形成に必須であることが明らかとなっている。シンシチン-1,シンシチン-2は細胞融合を促進し,サプレシンが細胞融合を抑制する。これらの発現バランスで胎盤の生理的な発達・機能が制御されており,その異常は各種周産期疾患の発症につながると考えられる。
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