Japanese
English
綜説
新チトクロム学説
A new theory of cytochrome.
奥貫 一男
1
Kazuo Okunuki
1
1大阪大学理学部生物学教室
1Department of Biology, Faculty of Science, University of Osaka.
pp.121-129
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906186
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Ⅰ.はしがき
細胞呼吸は微量の青酸や酸化炭素(以下COと記す)などで強く阻害され,COの阻害が光を照射すると回復することから,活性基として鉄化合物をもつ酵素がはたらいていると考えられ,それが古くは呼吸酵素,チトクロムオキシダーゼなどと呼ばれていたのであるが,近頃では自酸化性のあるチトクロムa3というものが同じ意味に用いられている。名称はちがつていても,それらはいずれも細胞呼吸の末端酸化酵素の役割を果しているものを表現しているのであるが,本体は未詳であつた。Warburgはこの酵素のCO錯化合物が吸収する波長の光をあたえた時に効果的に解離して酵素作用をあらわすと仮定して細胞呼吸のCO阻害を回復させる単色光照射実験を行い,590,545をよび430mμ附近でCO阻害回復がみられたことから,呼吸酵素のCO錯化合物の吸収帯は,α,βおよびγがそれぞれ,それらの位置にあるヘムタンパク質であると結論した。しかし,Warburgがノーベル賞受賞記念講演1)で"呼吸酵素は細胞に微量しかふくまれていないから,それを抽出精製して研究することは,あたかも星にある物質を人が手にいれることのように困難である"と述べたように,だれも呼吸酵素を単離し,その性質をあきらかにすることに成功しなかつた。
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