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はじめに
1950年代に逆説睡眠(Paradoxical Sleep)の存在がヒトや動物で明らかにされて以来,この特異な睡眠の発現機構に関して多くの仮説が提唱されてきた。切断実験や破壊実験の結果から,下位脳幹(橋・延髄)に逆説睡眠の中枢があることは今日疑いの余地がない16,17)。事実,中脳後端で脳幹を完全に切断されたネコでも,筋の完全な弛緩や,急速眼球運動の出現,そして呼吸や心拍の乱れなどが周期的に観察される。これに反して,逆説睡眠時に正常な動物で観察される,大脳皮質脳波の賦活や,外側膝状体および大脳皮質視覚領で記録されるPGO波は,脳切断後まったく認められなくなる17,51)(図1参照)。このことは,逆説睡眠に特有な諸現象の発現機構も下位脳幹部に存在することを意味している。それでは下位脳幹のどの部位が,この睡眠期に出現する主要な現象の発現と維持に重要な役割を果たしているのだろうか。そしてこの睡眠期はどのような仕組みによって出現するのだろうか。本稿では最近の知見を中心として,逆説睡眠中枢機構に関する研究に,今日どのような展望が見られているのかについて述べることにしたい。
Recent studies on the central mechanisms of paradoxical sleep (PS) revealed that the generation of PS is not mediated by a single PS “center” or neuronal population in the brain, but organized by several highly localized and specific populations of neurons that we call PS-ON neurons. PS-ON neurons present no discharge during wakefulness (W), but begin firing during slow wave sleep (SWS) just prior to the onset of PS, and maintain their tonic and high rate of discharge throughout PS.
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