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I.睡眠調節の概要
睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠という異なる状態があり,これら2種類の睡眠を調節する脳部位(睡眠中枢)が前脳基底部から脳幹にかけて分化している。そこでは,ニューロン活動に基づく神経機構と,各種の修飾物質に基づく液性機構の2種類の調節機構があって,両者の相補的な相互作用のもとに睡眠覚醒状態が動的にコントロールされている。この総説は,睡眠調節の液性機構でなんらかの役割を演じている内因性の生理活性物質すなわち睡眠物質を扱うものである。ちなみに,神経機構については本特集の三つの章で詳細に扱われている。
睡眠調節の様式には二つの基本法則がある。第一の法則は,睡眠は1日を単位とするリズム現象であり,脳内に存在する生物時計に管理されているというものである。第二の法則は,睡眠はホメオスタシス現象であり,先行する断眠時間の長さによって睡眠の質と量とが決定されるというものである。これらの法則は互いに協調しており,互いに相手を補完する関係にあるが,ほんらい生体が進化の過程で別々に獲得したものと考えられ,それぞれ独立に作用を現すことができる。そして,後者のほうがより新しい高度技術であり,より適応性に富んでいる。この高度技術を支えているのが,他ならぬ多種類の睡眠物質であると理解できる。
Sleep has multidimentional functions. It modulates metabolic processes at the molecular level, synaptic neurotransmission at the subcellular level, detoxification, restitution and proliferation at the cellular level, thermoregulation and neuroimmunoendocrine information processing at the physiological level, antistress reactions and emotional fluctuations at the psychological level, immune and host defense responses at the pathological level, growth and time-keeping at the whole body level, pregnancy and lactation at the reproductive level, and strategy for survival at the evolutionary level.
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