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I.はじめに
一般に逆説睡眠(paradoxical sleep-REM睡眠とも呼ばれる19,27))とは,行動的には眠っているにもかかわらず,脳波は低振幅速波の「覚醒パタン」を示し,急速眼球運動が出現するいっぽう,全身の筋緊張消失が見られる睡眠の一時期をさしていわれる。ネコなどの動物ではさらにPGO活動(後述)がこの睡眠期に観察される。逆説睡眠は他の睡眠期(徐波睡眠)・覚醒期と同様,中枢神経系・自律神経系・体性運動系を含むきわめて広範な現象であり,その現象は持続的(tonic)なものと,一過性相動的(phasic)なものとに大別される7,27)。筋緊張消失・新皮質脳波の賦活は逆説睡眠に最も特異的な持続性現象であり,PGO活動・急速眼球運動は逆説睡眠に最も特徴的な相動性現象であるといえよう。現象論的には脳の特定部位での切断・破壊や薬物の投与などによって,上記の逆説睡眠決定基準の一,二を欠く逆説睡眠期を得ることは可能である。たとえば中脳後端部位の両側性破壊により,外側膝状体・大脳皮質にPGO活動を欠く逆説睡眠期が得られるし62),橋部位での局限した両側性破壊により,筋緊張消失を伴なわぬ逆説睡眠期を得ることもできる12,28)(後述)。断眠(逆説睡眠の妨害)後アトロピンを投与すると,新皮質脳波の賦活を欠く逆説睡眠,あるいは逆説睡眠に酷似した睡眠期が観察される13)。
The purpose of the present report is to describe our recent knowledge of central mechanisms critically implicated in the generation of paradoxical sleep (PS). In the first part of this report, we have described anatomical organization and neurophysiological mechanisms relevant to the generation of: (a) ponto-geniculo-occipital (PGO) activity, one of the most prominent 'phasic' events; and (b) postural atonia, one of the most characteristic 'tonic' events, which more or less define the paradoxical phase of sleep.
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