Japanese
English
特集 起立と歩行
姿勢の制御機構―固有背筋と前庭脊髄路細胞
Neural mechanisms of postural control―Dorsal paravertebral muscles and vestibulospinal axons.
杉内 友理子
1
,
篠田 義一
2
Yuriko SUGIUCHI
1
,
Yoshikazu SHINODA
2
1東京医科歯科大学耳鼻咽喉科
2東京医科歯科大学第一生理学教室
1Department of Otolaryngology, Tokyo Medical and Dental University, School of Medicine
2Department of Physiology, Tokyo Medical and Dental University, School of Medicine
pp.230-240
発行日 1991年4月10日
Published Date 1991/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900124
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はじめに
姿勢調節の基本は,頭部を重力に対して正しい方向に保持することである。そのために,体幹に対して頭部を調節する頸筋の制御系が働き,さらに体幹を四肢に対して調節する体幹筋と肢帯筋の制御が行なわれ,そして地面に対して体を支えるための四肢筋の制御が働く必要がある。それぞれの系で,体性感覚系が,フィードバック制御を中心としたローカルなレベルでの制御を行なうと同時に,体性感覚系・視覚系・前庭系を含むより高次の制御系が,これらの系をさらに統合的に調節するように働いている。このように反射的要素の強い姿勢制御機構に加え,学習によって得られた姿勢調節機構が重要な役割を果たしていると考えられる。
魚類では,頭部と体幹が一体となって動くのに対し,脊椎動物が陸上に移動した後に,頭部が独立して運動するようになり,それに伴い,頸部における椎骨と頸筋の特殊化が生じた。重力に抗して頭部を保持するために,頸部固有背筋が特別に発達を遂げた。また動物が二足歩行をするようになり,脊柱を垂直に保持する必要から,とくに腰部を中心とした固有背筋が発達した。このように重力下における姿勢調節にとって,頸筋を含めた固有背筋はきわめて重要な役割を果たしている。固有背筋は,Sherrington42)のいう抗重力筋に属し,抗重力筋の制御にとって,前庭系が最も重要な役割を果たしている。
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