Japanese
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特集 小脳歯状核系変性症とその周辺
DRPLAの遺伝について
DRPLA: Genetic review.
近藤 郁子
1
,
金澤 一郎
2
Ikuko KONDO
1
,
Ichiro KANAZAWA
2
1琉球大学医学部保健学科人類生態
2筑波大学臨床医学系神経内科
1Department of Human Ecology and Genetics, Faculty of Medicine, University of Ryukyu
2Department of Neurology, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
pp.94-101
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900010
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はじめに
神経変性疾患の遺伝性については,症例数が少なく,同一家系内の患者間で臨床症状が異なることがしばしばみられるほかに,発症年齢が幼年期から老年期にわたり,遺伝病遺伝子の保因者で発症しない者,すなわち非浸透者(nonpenetrant)もみられることから,遺伝形式を決定することが困難な症候群が多い。しかし歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy;DRPLA)は,これらの多くの困難さを伴うにもかかわらず,メンデルの遺伝法則にもとづくヒトの遺伝形式の辞典として知られるMcKusickのカタログ1)に,12537番のMcKusick番号を与えられた確立された常染色体優性遺伝病として紹介されているほどに,遺伝解析の進んだ疾患である。
1972年に内藤らは,5世代にわたる17名と19名の発症者を伴った2家系のDRPLAの大家系の臨床遺伝学的分析を行ない,DRPLAが常染色体優性遺伝を示すことを明らかにしたのみならず,飛び越し(skipping)もみられることから浸透率は100%ではないこと,淘汰率は0.02とほとんど淘汰を受けることなくDRPLA遺伝子が家系内で受け継がれるが,突然変異率は4.4×10-8ときわめて低いことを紹介している2)。
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