Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
小脳歯状核は周知の通り,大脳と小脳との間に介在する小脳深部核であり,運動の協調作用などに関する重要な核である。しかし病理学的には,奥村ら(1975)23),Shirakiら(1977)27),小柳ら(1980,1981)24,25),白木ら(1982)28)による歯状核変性に関する詳細な臨床病理学的,微細形態学的な研究以後,病因に関する病理学的研究の流れは停滞していたように思われる。その一方,とくに本邦においては,歯状核病変の記載にさいして,いわゆる「グルモース変性」との呼称が頻用されてきた向きもあり,ある意味では「グルモース変性」という用語が独り歩きしてきた傾向も否めないのが現状であろう。「グルモース変性」と称される組織像には,典型的なものから,グルモース的なものまで,症例間において少なからず差異があり,それらが必ずしも病期の違いで説明できる同一過程の病理像かどうかも多少問題があろう。また,「グルモース変性」という用語を使うこと自体に,ある種の抵抗を感ずる向きもあろう。そのような経緯を踏まえ,歯状核の病理組織像について,今一度原点に立ち返って検討し直してみる必要があろうとの印象をもつのは,筆者だけではないだろう。本稿では,これまでの「グルモース変性」を中心とする歯状核の病理学的研究の歴史を踏まえ,その後の展開を紹介する中で,この核が未だもっている病理学的問題点を明確にしてみたい。
This review concerns recent studies on the neuropathology of the dentate nucleus (DN) degeneration including so-called grumose degeneration (GD).
The term GD in the DN was first described in a case of progressive supranuclear palsy by Anzil, although the origin of GD was stemmed from Tretiakoff's GD in the substantia nigra, being different from the GD in the DN. Recent studies have shown that 1) In GD, granular materials in the neuropil consist of degenerated unmyelinated fibers containing neurofilaments (Okumura et al. ; 1975), auto-phgosome (Oyanagi; 1981) and deformed lamellar body (Arai; 1989), 2) most of these fibers probably consist of axon terminals of the Purkinje cells. Precise mechanism should be clarified in future.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.