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Guillain-Barré症候群(GBS)とその類縁疾患の病因物質として,抗ガングリオシド抗体が注目されている。Campylobacter jejuniのリポオリゴ糖がGM1ガングリオシドと同じ構造を有するなど,病原体と神経組織の分子相同性による発症機序が想定されている。GM1をウサギに感作することにより,ヒト軸索型GBSの疾患モデルが樹立された。ヒトGBSと同様に,本モデルでも免疫グロブリン大量静注療法が有効であった。抗ガングリオシド抗体検索は,すでに臨床的に汎用されている。軸索型GBSではGM1,GM1b,GD1a,GalNAc-GD1aに対するIgG抗体が,pharyngeal-cervical-brachial weaknessではIgG抗GT1a抗体が,Fisher症候群やBickerstaff型脳幹脳炎,急性外眼筋麻痺ではIgG抗GQ1b抗体が,補助診断として有用である。
はじめに
Guillain-Barré症候群(GBS)は,急性に発症する四肢筋力低下と深部腱反射消失を主徴とする末梢神経疾患である。急性に四肢筋力低下を来す神経・筋疾患の中で最も頻度が高い。GBSでは,運動神経伝導速度がしばしば遅延することから,末梢神経の髄鞘が傷害される脱髄性疾患と考えられてきた。しかし,1986年のFeasbyらによる報告5)以降,一次的に軸索が傷害されるGBSの存在が知られるようになった。現在GBSは,脱髄型と軸索型の両方を含む概念として捉えられている。そのほか,GBSには,Fisher症候群(FS)やBickerstaff型脳幹脳炎(BBE)など,様々な類縁疾患あるいは亜型が知られている。
ガングリオシドはシアル酸を有する酸性糖脂質で,神経細胞膜に豊富に存在する。脂肪酸を有し疎水性を示すセラミドと,親水性のオリゴ糖から成り,主に生理活性を有するのは細胞表面に露出した形で存在するオリゴ糖の部分である。中枢のみならず末梢神経系にも多く含まれるが,生体内での機能はまだ明らかではない。近年,ガングリオシドに対する抗体が,軸索型GBSやFSを中心に,自己免疫性末梢神経疾患の病因物質として注目されている。GBSやFSでは,抗ガングリオシド抗体は発症直後に最も抗体価が高く,経過とともに低下,消失することからも,発症機序に深く関与していることが示唆される28)。
患者血清中の自己抗体に関する所見が蓄積される一方で,先行感染病原体に存在するエピトープの解析が進み,GBSの発症機序として有力な分子相同性仮説を支持する知見が明らかになってきた。また,ガングリオシドの感作により動物モデルが樹立され,GBSが自己免疫性疾患であることを示す基礎的なデータも揃いつつある。
本稿では,GBSの発症機序や抗ガングリオシド抗体に関連する最近の進歩を中心に紹介する。先行感染病原体と神経組織との分子相同性,軸索型GBSモデル動物などの最新の基礎的データ,さらに臨床の現場における抗ガングリオシド抗体検索の応用に関し概説する。
Anti-ganglioside antibodies frequently are detected in sera from patients with Guillain-Barrésyndrome(GBS)and the related disorders. Pathogenesis based on molecular mimicry between the antecedent infectious agents and peripheral nerve molecules has been speculated:lipooligosaccharides of Campylobacter jejuni have identical structure with the terminal tetrasaccharide of GM1ganglioside. We established a disease model of axonal GBS by sensitization of rabbits with isolated GM1. Intravenous immunoglobulin accelerated the rate of recovery from the disease in the model rabbits, as have been shown in human GBS. The anti-ganglioside antibodies give useful information on the clinical diagnosis:IgG antibodies against GM1, GM1b, GD1a, and GalNAc-GD1a in axonal GBS;anti-GT1a IgG antibody in pharyngeal-cervical-brachial weakness;anti-GQ1b IgG antibody in Fisher syndrome, Bickerstaff's brainstem encephalitis, and acute ophthalmoparesis.
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