Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
本特集では「神経内分泌学の最近の展開」というタイトルで,この分野の最先端の研究をしておられる方々に執筆をお願いした。本誌に盛り込まれたトピックは,編者である筆者自身が,最近数年間の神経内分泌学領域で興味を持った研究を中心に,選択したものである。もとより筆者は下垂体外科を専門とする脳神経外科医であり,神経内分泌学全般を俯瞰する能力もなければ,バランスよくテーマや筆者を配置することも難しい。しかし,この四半世紀の間,内分泌学会に籍を置き,特に間脳下垂体内分泌学のめざましい発展を享受してきた一人として,多少は目が肥えているつもりである。したがってこの分野の真の専門家としてよりも,神経科学分野からのwatcherとして,本誌の読者と同じ視点からこの分野を眺めることができるのではないかと考えている。
筆者が医学部を卒業した1970年代前半は,正に間脳下垂体内分泌学の研究の多くが,一斉に開花したような時代であった。TRH(1969年),LHRH(1971年),somatostatin(1974年),CRH(1981年),GRH(1982年)等々,枚挙に暇がないほどの視床下部ホルモンや神経伝達物質が単離され,構造決定された。そして,それまで神経系,内分泌系と各々独立した2つの生体信号系として理解されていた概念が,1950年代における神経分泌細胞の同定と相まって,一挙に統合された感がある。さらに次々と発見,同定されていったいわゆるneurotransmitterは,単なる神経内分泌という範疇を越え,neuromodulaterともneuroregulatorともいうべき考え方へと発展していった。これらの中でも臨床的に意義の深いOrexin(1998年),PrRP(1998年),Ghrelin(1999年)等は本邦の研究者の寄与が大きく,本特集でも原稿をお願いしている。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.