連載 フロンティア・リポート[6]
しくみの解明とものづくりの学際研究で拓く近未来のがんドラッグデリバリーシステム
新間 秀一
1
,
立川 正憲
2,3
1大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻
2東北大学大学院薬学研究科
3東北大学大学院医工学研究科
pp.353-359
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200208
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なぜ、がんDDSが必要なのか
いまや日本人の2人に1人はがんに罹患すると言われています。がん化学療法は、がん治療において欠かせないものとなっていることは論をまちません。前号では、抗がん剤が効く人と効かない人、副作用が出る人と出ない人の要因解明と、がん化学療法の層別化・個別化の戦略について取り上げました。
一般に抗がん剤は、旧来使用されている薬物を中心に、臨床での投与量において有効域と副作用発現の用量域が狭いものが多く、治療効果と副作用は、表裏一体の関係であることも事実です。これは、がん組織以外の正常組織や細胞にも抗がん剤が分布することを避けられないことがその一因です。そこで抗がん剤をよりがん組織に選択的に到達させることで、治療効果を最大限に引き出し、かつそれ以外の組織への薬物分布を回避して有害事象を軽減することが可能となります。これが、“ドラッグデリバリーシステム(drug delivery system;DDS)”開発の原点です。これを実現するために、現在まで多様なDDSの開発が進められてきました。今回は、私の視点からみた、がんDDSを取り巻く課題とDDSの未来予想図を取り上げます。
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