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はじめに
白内障手術療法の進歩は著しく,小切開無縫合手術が広く行われるだけでなく,バイマニュアルによる極小切開白内障手術,インジェクターおよび眼内レンズの進歩によるさらなる小切開化が試みられている。眼内レンズ自体の機能も向上し,多焦点眼内レンズ,調節眼内レンズ,収差の少ない非球面眼内レンズ,着色眼内レンズなど視機能の向上を目ざしたさまざまな眼内レンズの開発が進んでいる。しかしながら,未だに解決されていない問題点の1つとして後発白内障が挙げられる。後発白内障は白内障手術が始まった早期より問題視されていて,その発生予防や治療にさまざまな研究がなされてきた。Squareエッジの後発白内障抑制効果は日本から発信された優れた研究1,2)で,現在もその成果が新しく作られる眼内レンズに生かされ,後発白内障の発生頻度は明らかに減ってきている3,4)。しかし,残念ながら後発白内障の発生を完全に抑制することはできていない。図1に示すようにさまざまなタイプの水晶体囊の混濁が視機能の低下を生じる。現在も後発白内障の発生率は5年で18.4~38.4%くらいと報告5)されている。
後発白内障が発生しても,YAGレーザーによる後囊切開術は劇的な効果があり,視機能の改善は著しい。後囊を切開することはたやすいが,混濁した一部の後囊のみが開放している細隙灯所見は決してきれいとはいえないばかりか,眼生理機能にとってもマイナスである。また,後発白内障を伴う網膜硝子体疾患の治療でレーザー光凝固や網膜硝子体手術を行うときに,混濁が治療の邪魔になることもよくある。筆者は,白内障手術直後の水晶体囊と眼内レンズのきれいな関係を永遠に保っていたいと常々思っている。
近年開発されている眼内レンズは素材こそポリメチルメタクリレート(PMMA),疎水性アクリル,親水性アクリル(ハイドロゲル),シリコーンなどさまざまであるが,最近開発された多くの眼内レンズは後発白内障の抑制を考えてsquareエッジ形状をしている。図2に最近の2種疎水性アクリル眼内レンズのエッジ形状と水晶体後囊の術後混濁変化を示した。VA60CA(HOYA)の後に同一企業からVA60BB(HOYA)が開発され,両眼内レンズともsquareエッジ形状をしているが,眼内レンズ周辺の厚みや光学部と支持部接合部にエッジ形状を設けるなど形状の工夫をすることで,後発白内障の初期現象である後囊混濁度の増加を著しく抑制している6)。しかし,後囊混濁度の増加率は減少しているものの,経時的には確実に混濁度が増加している。したがって,増加する後囊混濁を完全に抑制するにはsquareエッジによる後発白内障抑制効果だけでは限界なのではないだろうか。
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